Critical Path

限界工程

キミが想うようなゴールだったでしょ?

これはアイドルのライブに限ったことではないけれど、
何事も「楽しむ」ために大事なことは「自分が楽しもう」という気持ちを持って向き合えているかどうかだと思う。
文字にするとあまりにもシンプルで当たり前だけど、READY TO KISS は、大川彩菜は、僕にそれを思い出させてくれた。

2017年11月10日。READY TO KISS史上最大のワンマンライブ、マイナビBLITZ赤坂。
キスと爆音でBLITZが、世界が埋め尽くされた夜。
f:id:Gyaoon:20171114121243j:plain

ド派手な特効、四方八方に飛び交う色鮮やかなレーザービーム、そして、轟くSE。
会場の設備を存分に生かした演出はさながらREADY TO KISS JAPAN TOURの様相。
今にも「ライブハウス“マイナビBLITZ”へようこそ!」という声が聞こえて来そうだ。

さあ、ライブの時間。


この日限りの生バンドを引き連れて序盤から猛攻が仕掛けられる。
新生レディキスの象徴『READY TO KISS』、核弾頭の『トップシークレット』が続く。
『永遠に』の激情的なサウンドで早くも感極まっているメンバーの姿も見えた。

MCを挟んでからは所謂“裏曲”ゾーン。
ワンマンライブでしか聞けない曲の連続で一曲毎にどよめく客席。
王道アイドルポップチューン『告白』、最古曲の一つ『オリーブの風の吹く街』、ミディアムテンポが沁みる『名もなき花』、多幸感に満ちた『世界一のクリスマス』、最速ナンバー『見つめられない』、この夜にピッタリな『恋愛狂奏曲』、勝負するならこの日『My way』。

特に『名もなき花』。スピードや強度のイメージが目立つレディキス楽曲の中では異彩を放つメッセージソング。
僕は“古参”でも“おまいつ”でも無いけれど、短くても途切れ途切れでもこの日に至るまでのことを思い出して「出会えてよかった」というフレーズに情緒的になっていた。

READY TO KISSのライブは止まらない。
再びバンドメンバーが登場して本編を締めにかかる。
センチなSEから艶やかな『君恋』,THE "ANTHEM"『秒シミュレーション』、バンドサウンドに映えた『STARLIGHT』、レディキスの歴史そのもの『Chu Chu』。
4曲とも人気かつ定番曲だけど、特に『秒シミュレーション』からの『STARLIGHT』はこの日最高の流れだった。

清川麗奈はノエル・ギャラガーを越えた。独特のダンスや表現力がクローズアップされる彼女だけど、この日の『秒~』における伸びがあって透き通った落ちサビのヴォーカルは一世一代のそれだったと思う。
『STARLIGHT』レディキスらしい曲で、悪い時は\オイオイ/叫んでるだけの曲になってしまいがちだけど、バンドサウンドで取り戻した新鮮さ、星空のような煌びやかな照明との相乗効果で格別なものになった。気がついたら会場中を縦横無尽に走り回って\おまえがいちばん/していた。

アンコール後のことはあまり覚えていない。ライブを楽しむことに夢中になりすぎた。
世紀末に一世を風靡した芸能人が出てきて告知していたり、夢か現か曲中に衣装が変わった『エメラルドクリームソーダ』…。

ただ一つだけ、鮮明に思い出せる瞬間がある。
『ムテキモード』の2番Bメロ。全てが激しく弾け飛んだように周囲が一斉に広がって円を描いた時。
俺は、本当にレディキスのライブが大好きなんだと実感できた一瞬だった。


いいライブは往々にして、メンバーだけが盛り上げようと気負いすぎず、客席を上手く扇動出来ている。
この日はまさにそうで、一体感という言葉では有り余るくらい、ステージとフロアの熱量が交わっていた。
赤坂BLITZは、世界中の何処よりも揺れていた。


大川彩菜と話したことがある人はご存知だと思うが、彼女はとにかく早口でしゃべる。
始めは面食らうかもしれないけど、実は彼女は落ち着いて話すことが出来ないわけでもない。
それでも「どうしてそんなに急ぐの?」と以前に聞いたことがある。
「限られた時間の中で来てくれた人を少しでも多く楽しませたいから。」
なるほど。いかにも彼女らしいなと笑ってしまった。


「LIVE」は生きていることでもあって、当然ながらその日、その瞬間は二度と訪れることが無い。
生き馬の目を抜くようなアイドル時代では立ち止まる時間なんて無いのかもしれない。
レディキスと大川彩菜は、これからも彼女たちの合言葉の通り全力疾走していくだろう。
きっと、それが彼女達のプライドであり、彼女達のスタイルであり、彼女達のやり方だから。



READY TO KISSは今日もステージの上で語り続ける。
f:id:Gyaoon:20171114123028j:plain