Critical Path

限界工程

Every little thing,Every precious thing

「人生を変える出会い」
まるで映画のような大袈裟なフレーズだけど、
人は一生のうちに何度こんな体験ができるだろう。
もちろんそれは直接的に交わったわけではないし、
極めて間接的な一因にすぎないかもしれない。



それでも・・・2015年10月11日は、僕にとって人生を変える出会いの日になった。



初めて、君としゃべった。



この3年間を振り返ると、夢というにはとても大それた日常の延長があった。
「推しが武道館いってくれたら死ぬ」なんて言いながらも、僕たちの物語の大部分は渋谷や秋葉原のライブハウス、ビルの片隅のカフェで続いていた。日々の中で、彼女が紡ぐ言葉は魔法のようでもあり、取扱説明書のようでもあり、時に激しく、時に切なく僕を揺さぶっては駆り立てた。彼女と公約するたびに、物語は急展開を迎えていった。
住む場所も変わった。仕事も変わった。石油王には・・・これからなる予定。
口だけで何も行動に移せていなかった僕の人生が動き出した。

出会った頃の彼女を今と比べると、だいぶ影があった。
表情は笑っているけど、目の奥には悲しさが垣間見えて、とても気になった。
個人活動が長かった過去もあり、グループに馴染めるのか…完全に余計なお世話だけど、そんなことも気になった。今と比べると全く頼もしさが無かった彼女を見て何となく守らなくちゃと思った。これからは彼女の孤独を拭うため、不安を終わらせるにやっていこう。ヲタク特有の勘違い。

始めは肩書きも見習いで、衣装も得られない、ステージにも満足に立たせてもらえない境遇だったけれど、一話一話ストーリーを紡いでいくように毎週末少しずつ彼女と歩んでいく日々は、全てが楽しくて、眩しくて、いつからかすっかり生きがいのようになっていた。

プリンセスになる過程で彼女自身も大人に変わっていった。
赤茶色に染まった髪も、耳元に光る宝飾も、色鮮やかな爪先も、仄かな薔薇の香りも決して目立つ方では無かった彼女なりに試行錯誤して作りあげていったものだと思うと一層愛しさが募る。

ポジションはいつも端っこだった。それは彼女のせいではないのに。
つい余計なことを言っては怒らせてしまうことも何度もあった。
それでも今思う。僕が好きだったのは、たとえステージのセンターでなくても
歌うパートがなくても自分の与えられたポジションでずっと懸命に自分を表現しようとし続けてきた姿を見てきたから。彼女が立っているその場所こそが僕の好きな場所だった。

いつだって彼女の存在が僕の“答え”であり続けた。

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真夏のお台場、最後の瞬間はそこに迫っていた。
灼熱の日差しも前後の身体のぶつかり合いも気にならなかった。
僕には彼女しか見えていなかった。

ただ、泣いていた。涙腺に届く前に心が先に泣き始めていた。
おかしいな?いつも口論したり真剣な話になったら向こうが先に泣いてたのにな。
強い子だな。僕の気づかないくらい強い“アイドル”になっていたんだな…。

胸の鼓動とシンクロするように“あの音”が響き渡る。
いつだって望んでいた。彼女のいつかの時は絶対にこの曲で終わってほしい。
喧嘩して仲直りした冬の日も思い通りに行かず涙した春の日も
声が枯れるまで叫び続けた夏の日も指先で愛を確かめ合った秋の日も
この曲はいつもそばにあった。最高のフィナーレ。


アイドルとして彼女が最後に歌ったフレーズは
「君はそう、僕のジュリエット。」



ずっと、大好きだった。
泣き虫で、腹黒で、子供っぽくて、不器用で、すぐ拗ねて、頑固で、ストイックで、負けず嫌いで、努力家で、古風で、ため息が出るほど可愛くて、言葉のセンスが良くて、ちょっぴり自信が無くて、いつも自分より周りに優しくしすぎてて、歌声は意外と低くて、ステージの上で大げさに目を見開いて、どんなときも必ず僕を見つけてくれて・・・。
好きな理由なんていくつに増えたかなんて数えられそうにもない。



ロミオとジュリエット』の物語はおしえてくれる。
お互いが死ぬことではじめて報われる愛もあることを。



小島まゆみは出会った日から最後の瞬間まで、ずっと僕のIdol-ジュリエット-だった。
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甘く儚い恋の物語は終わった。
いつだって会いに行こうと思えば待っていてくれて「おそーい!」なんて頬を膨らませていた“やっと見つけたお姫様”は“もう二度と会えないあなた”になってしまった。

喉が傷だらけになるまで叫び続けた。
歩けなくなるまで跳び続けた。
その瞬間瞬間に感情の全てを注ぎ続けた。
永遠に終わらない魔法にかかったかのように。

目に見えないものの方が美しいことが時にはある。
むしろ人生において美しいものは大抵目には見えないものだと今ならわかる。
永遠も魔法も本当は無い。だからこそ、人はまた前に進んでいかなきゃいけない。前に進んでいくことができる。


楽しい日があるから明日がある。
楽しかった日々があるからこれからがある。
強くならなきゃ。自分の道は自分自身で選んで気高く生きていくよ。
全部、君が教えてくれたから。

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小島まゆみさん。あなたは僕の青春そのものでした。
生きている限り、この物語をずっと忘れることはないでしょう。


本当にさようなら。たくさんの夢と感情を与えてくれてありがとう。